敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
 どうしよう。頭がぼうっとしてきた。

 けっして一方的ではないと伝えたくて、私も舌を動かそうとするが結局キスの主導権は隼人さんにある。

「んっ……んん」

 唾液の混ざり合う音が直接脳に響いて、合間に漏れる吐息混じりの自分の声さえ羞恥心を煽られる。

 キスってこんなに気持ちよかったんだ。

 強引なのに傲慢さはない。もっとしてほしくなる。

 ぎゅっと隼人さんにしがみつくと、腰に回されている腕に力が込められた。目の奥が熱くなり、力が抜けていく。

 キスを終わらせたのは隼人さんの方で、潤んだ瞳で彼を見つめる。息が上がって隠れるように隼人さんの胸に顔をうずめた。

 なにか、なにか言わないと、と思うのに声が出せない。心理的にも物理的にもだ。心臓が壊れそう。

 とにかく呼吸を整えようと意識を集中させる。その間、隼人さんは私の頭を撫でてくれていた。

「未希」

 耳元に顔を寄せ、名前を呼ばれるだけで、肩がびくりと震える。低くよく通る声は、耳慣れしているはずなのに今は私の心を揺らすばかりだ。

「顔を見せてほしい」

 懇願めいた口調に戸惑いながら返す。そう言われるとますます顔を上げられない。

「な、なぜですか?」

 我ながら可愛くない反応だ。すると頭を撫でていた彼の手が頬に伸ばされ顔の輪郭に触れる。不意打ちに驚いた瞬間、顎に指をかけられ上を向かされた。すぐ近くでこちらを覗き込んでいた隼人さんと目が合う。

「キスしているときの顔も、そうやって照れている顔も全部見たいんだ」

 反応を示す前に先に額に口づけを落とされ、パニックを起こしそうになる。
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