敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
 ひとりで使うには大きすぎるダイニングテーブルを挟んで真正面に座り、彼と向き合う。仕事で来ているのに、なんだか不思議な感覚だ。

 社長は言っていた通りコーヒーになにも入れずカップの縁に口をつける。私は心なしかいつもより多めに牛乳をコーヒーに注いだ。あっという間にカップの中身はミルクティーのような色になる。けれどこれはこれで冷めて飲みやすい。

 ひと口ふた口飲んでからカップを置き、持ってきた鞄から書類を取り出す。

「契約内容など、念のため一度確認しますね」

「ああ」

 伯母から申し送りのあった内容とほとんど差はない。使い方に困りそうな家電製品などもあまりなさそうだが、念のため使い方を聞いておく。

 ベッドメイキングは必要なく彼の寝室に立ち入らないことを除けば、とくに気をつけておくべきことや、注意してほしいことはないようだ。

「この前の件についてなんだが」

 話が一段落ついたところで、ふと社長が話を振ってきた。彼の顔を見ると、なんとなくばつが悪そうで、私はおとなしく聞く姿勢をとる。

「失礼な物言いをした弁明を一応、させてほしい。実は紅の前に頼んだ家事代行業者から派遣されたのが若い女性だったんだ」

 どうやら前回、伯母の代わりに来ていた私を若い女性だからと責めたことに対してらしい。それについてのわだかまりはもう私の中ではないのだが、彼の言い分も聞こうと余計な口は挟まなかった。
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