敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
「それはよかった」

「今度、作り方教えてください」

 意気揚々と尋ねる私に、隼人さんはわずかに呆れた面持ちになる。

「教えるほどでもないぞ。それに未希の作った料理の方がよっぽど旨い」

 私の作ったサラダを口に運びながら隼人さんは言った。

「ありがとうございます。でも、もしも隼人さんが体調を崩されたときのためにも」

「そのときは、未希の味つけで作ってくれたらいい」

 言い終わらないうちに隼人さんがきっぱりと言い放った。目をぱちくりとさせ彼を見たあと、私は小さく返す。

「はい。でも披露する機会はない方がいいかもしれませんね」

 できれば隼人さんには体調を崩してほしくない。さっきから胸が温かいのはこの雑炊のせいだけではないと思う。

「美味しいです。でもそれ以上に、隼人さんがこうして私のためにしてくださったのが、本当に嬉しいんです」

 食べながら顔がにやけてしまう。

 伯母以外で誰かに自分のために料理を作ってもらったのは初めてかもしれない。

 体調を崩すのは悪いことで、迷惑をかけるから自分ひとりで全部なんとかしないといけないと思っていたのに、隼人さんはこんなにも優しくて甘やかしてくれる。

「ありがとうございます、隼人さん」

 笑顔でお礼を告げると、隼人さんはこちらをじっと見つめてきた。その視線の意味が理解できずなにかまずいことを言ってしまったのかと内心で焦る。しかし隼人さんは曖昧な笑みを浮かべた。
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