敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
「あらやだ。ごめんなさい、ちょっと大事な電話だわ。少し席を外すわね」

 そう言って美奈子さんはそそくさとリビングから出ていってしまう。自分の身になにが起こっているのかいまいち実感が湧かない。

 そのとき社長の手が肩から離れ、彼がため息をついたのが伝わってきたので、私は勢いよく立ち上がって振り返った。

「社長、どういうつもりなんですか?」

「悪かった。実は両親に勧められてMitoの社長令嬢と、結婚を前提に何度か会っていたんだ」

 その発言に少なからず動揺する。彼とMitoの社長令嬢との話は聞いていたが、本人の口から改めて彼女との関係を告げられると、なぜか胸がざわついた。

「だが、あいにく破談になってね。母には結婚を考える相手が他にできたからだと伝えたんだ。相手について教えろと言われてのらりくらりかわしていたら、いつものようにここにやってきて沢渡さんを見て勘違いしたらしい」

「そ、そんな……」

 ようやく経緯が見えてきた。いろいろなタイミングが重なって生まれた誤解だが、解くのなら早いうちにしなければ。

「とにかくお母さまに本当のことを伝えましょう」

「悪いがそれはできない。相手がいないどころか、家事代行業者まで頼んでいると母が知ったら、明日にでも見合い話を持ってくるだろう」

 そうか。美奈子さんは私を、社長が結婚を考えている相手と思い込んでいるが、そうではないと伝えた場合、ならどうして私がここにいるのかという話になってしまう。どう考えても家事代行業者の話は避けては通れない。
< 43 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop