敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
第三章 履歴書以上の情報も夫婦なら必要ですか?
 暖かくなったり、寒くなったりを繰り返し、春の到来とまではいかないが、寒暖差に体調を崩しがちになる二月下旬。今日も日中は三月上旬並みの気温があり、コートどころかセーターでさえ不要だと思ったのに、また週末は寒くなるらしい。

「結婚!?」

「うん、だめかな?」

 珍しく私から伯母の家でご飯を食べたいと伝えると、伯母は私の好きなものをたくさん作ってくれた。伯母の作る豚汁はとくに美味しくて、レシピを聞いて何度も作っているけれど、どうしても同じ味にならない。ここでしか食べられないのだ。

 箸を動かしながらさりげなく結婚する旨を伝えると、伯母は驚きのあまり汁椀を取り落としそうになった。持ち前の反射神経で回避したものの目を白黒させてこちらを見ている。

 社長は言葉通りすぐに契約書を作成し、それを基に私は改めて選択を迫られた。

 一緒に暮らすが、寝室は別で私の自室を用意する。子どもも夫婦の営みも必要ない。私は基本的に家事全般を担い、外では必要に応じて彼の妻として振る舞う。

 逆に言えば、マンション内では私は家事代行業者として働き、仕事を終えたらあとは好きに過ごしてもいいという話だ。

 提示された支払い金額は相場よりもはるかに高くて驚きを隠せない。

『こ、こんなにいただけません』

『かまわない。あと、いくらこの結婚を仕事として受けてもらうとしても、他の異性と関係を持つのはやめてほしい』

 その場合は先に離婚を申し出るように言われ、ひとまず頷く。正直、杞憂だとは思うが、これも彼の律儀さか。

『社長こそ他にお付き合いしたい方や、結婚されたい方がいたら遠慮なくおっしゃってくださいね』

 力強く答えると彼は苦笑した。
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