敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
 家事ができるのを長所として評価されるのはありがたいが、それを打算的に捉えられるのは本意ではない。社長はどうなのだろう。

「うん。大丈夫。隼人さん自身も家事ができるし」

 半分事実で半分嘘だ。社長の思惑が私に家事をしてもらうことだとしても、私と彼の結婚は雇用契約によるものなので、文句は言えない。結婚しても家事は私が引き受ける。けれどそこまで伯母に話す必要はない。

「なら、いいわ。それにしても、未希が結婚なんて……本当におめでとう」

 にっこりした伯母の目尻に皺が刻まれる。嬉しそうな声と表情にわずかに罪悪感が募る。

「ありがとう。今度、隼人さんが挨拶に来たいって言っているんだけれど、紅実伯母さんはいつが都合がいい?」

 社長に挨拶の段取りについて言われていたので、そちらの話題に移る。伯母は鞄から手帳を取り出した。ページをめくりながら、伯母がふと思い出したように口を開く。

「そういえば、真実(まみ)には、もう伝えたの? なんて?」

 真実というのは私の母の名前だ。悪いことをしたわけでもないのに、伯母の質問に気まずい気持ちになる。

「うん。メールで一応、伝えたけれど……」

 ぎこちなく答えると、伯母はわずかに眉をつり上げた。

「相変わらずね、あの子は。娘のことだっていうのに」

 珍しく嫌悪感のまじった口調に私は慌ててフォローを入れる。伯母と母は実の姉妹だが仲はあまりよくない。

「大丈夫。今更だし。伯母さんが会ってくれたら十分だよ。私のお母さんは実質、紅実伯母さんみたいなものだから」

「未希……」

 そこから話題を変え、楽しく食べ進める。結婚したら、こうやって伯母の手料理を気軽に食べられないのかと思うと少しだけ寂しかった。
< 56 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop