敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
「気に入った味とかあったら教えてくださいね。今後の参考にしますから」

「気に入ったらまたここに来ればいい。未希の料理は十分旨いよ」

 仕事を評価してもらえるのは嬉しい。けれど感じるのはそれだけではない。私のためにとこのお店を選んでくれたことや、彼とのやりとりのひとつひとつが優しくて嬉しい。

「ありがとうございます」

 それから料理に舌鼓を打ちつつ隼人さんと他愛ない会話をする。恋人や夫婦と呼ぶには硬すぎるかもしれないが、少しだけ彼との距離が近づいた気がした。

 隼人さんに改めてお礼を言い、車に乗り込む。ここからが本番だ。そこで私は疑問を口にする。

「あの、そもそも私たち、どういう経緯で結婚したことにしましょう?」

 今から伯母に挨拶をしに行くのだが、あまり具体的な話は詰められていない。本当はさっきの食事のときに話すべきだったのかもしれないが、つい忘れていた。

 依頼主と家事代行業者として出会い、偶然同じ会社の社長と契約社員であったことに縁を感じて……。第三者に話すのはこれくらいでいいのだろうか。

「俺が未希に一目ぼれした、でいいんじゃないか?」

「それはどう考えても無理があります」

 隼人さんの回答を即座に否定する。今は冗談を言っている場合ではない。

「そこまで言わなくてもいいんじゃないか?」

 前を向いている彼は苦笑いしている。私は唇を尖らせた。
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