敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
「言いますよ。ただでさえ私たちの結婚は絶対に驚かれますし、信じられないという人が圧倒的なんですから」

 偶然が重なっただけで結婚するなら、彼はもうとっくに違う女性と結婚しているだろう。

「周りは関係ない。未希に家事代行を継続して頼んだのも、この結婚を申し出たのも、未希とのやりとりがあって決めたことだ」

 しみじみと呟かれ、なんだか照れくさくなる。人たらしとでもいうのか、人の上に立つ存在の資質とでもいうのか。いつも彼の評価はストレートだ。

「それにしても小松社長はもちろんだが、お母さんに挨拶しなくていいのか?」

 別の話題を振られ、気持ちがすっと冷静になる。

「ええ。メールでは伝えていますし、とにかく仕事が忙しい人なので……」

 とはいえ娘の結婚相手が挨拶に来るというのだ。普通なら時間を空けるなり、作るなりするだろう。けれど母は普通ではないのだ。

 そういえば母の勤め先を彼に伝えていなかった。念のためと思い、口を開く。

「あの、言いそびれていましたが実は母の勤め先はMitoの本社なんです」

 Mitoと言えば隼人さんが結婚前提でお付き合いしていた水戸直子さんのお父さまが経営している会社だ。妙なつながりを隼人さんはどう感じるのか。

 隼人さんはこちらをちらりと見たが、特段なにも言わない。そのせいで私は聞かれてもいないのに、我が家の事情を語り出す。
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