敏腕社長は雇われ妻を愛しすぎている~契約結婚なのに心ごと奪われました~
「かまわない。夫婦で食事を共にしないのも妙だろう」

「ですが……」

 たしかに家事代行業者としてならきっちりと一線引くべきだが、私たちはその前に一応夫婦としての立場もある。まだ隼人さんのご両親への挨拶も残っているし、不自然ではない程度に夫婦らしくしておかなければという彼の目論見もあるのかもしれない。

「無理にとは言わないが、その方が片付け もまとめてできるんじゃないか?」

 ところが、続けられた彼の言葉につい噴き出しそうになった。そういう観点で言ってくるとは、やはり彼は家事ができる人なのだとしみじみと思う。

「どうした?」

「いいえ。ありがとうございます。ではお言葉に甘えますね」

 不思議そうに尋ねられたが、おとなしく隼人さんに従うことにした。

 自分の食事を用意し、エプロンを外して彼の前の席に遠慮がちに座る。

「いただきます」

 律儀に手を合わせ、スプーンで黄色い卵を破り、中のケチャップライスごとすくう。あのときの記憶とシンクロするが、私はもう大人で今はひとりではなく目の前には隼人さんがいる。味は想像通り。懐かしさに胸が苦しくなった。

 隼人さんのお口には合ったのだろうか。

「俺は未希とは逆で、自分のために飯を作ってもらうってことが今までなかったんだ」

 尋ねようとする前に、ふと隼人さんが呟いた。
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