相思相愛・夫婦の日常~カナ♡ネオ編~
そんな時だった━━━━━━

高校三年の冬。
雪が降る、12月の夜更け。

奏弟のスマホが、けたたましく鳴り響いた。

『………ん?誰だよ、うっせーなぁ!!
こんな時間に━━━━え!?
ネオちゃん!!!?』

慌てて出る。

『ネオちゃん!!』

「カナ…カナ……」
電話口で、嶺音が泣いている。

『え?どうしたの!!?』
ガバッと起き上がる。

「お父さんが━━━━━━」
奏弟は、ベッドを駆け下り部屋を出ていった。


嶺音の父親が、事故で亡くなった。

たった今、息を引き取ったらしいのだ。


タクシーで、救急病院に向かう。
病院内に駆けていくと━━━━━━

椅子に腰かけ項垂れた、小さな嶺音がいた。


『ネオ…ちゃ……』
奏弟の声に、バッと顔を上げた嶺音。

その顔は、ぐちゃぐちゃに歪んでいた。

苦しみと悲しみの泣き顔。
奏弟はその表情を見て、胸が鷲掴みにされたように苦しく痛んだ。

勢いよく立ち上がった嶺音が、奏弟に駆けていき抱きついた。

『カナ…カナ…カナぁぁぁーーー!!』

嶺音が奏弟の腕の中で、声を上げて泣く。

この頃には━━━とうに背丈は奏弟が越していて、嶺音は奏弟に包み込まれてただ泣いていた。

奏弟も嶺音を抱き締め、背中をさすっていた。

この日奏弟は、一晩中嶺音の傍で背中をさすり慰めていた。


嶺音の父親の通夜と葬儀。

嶺音はもう、泣かなかった。
凛とした態度で、父親との最期の別れの時間を過ごしていた。

『カナ、ありがとう!
カナのおかげで、お父さんとちゃんと最期の別れが出来たよ!』

『うん』

『カナ』

『ん?』

『カナの高校の卒業式。
見に行ってもいいかな?』

『え?あ、うん!もちろん!』

『ありがとう!』


そして奏弟の高校の卒業式━━━━━━

保護者の席に、嶺音がいた。
奏弟が振り向くと、微笑み小さく手を振ってくれた。

『カナ!卒業、おめでとう!!』

『ありがと!』

『カナ、話したいことがあるの。
少しだけ、時間もらえない?』

『うん!』

高校を出て、二人が当時住んでいたマンション(つまり実家)近くの公園に向かった。

奏弟が小学生の時、よく遊んでいた公園だ。

『ごめんね、カヲル達と遊ぶんだよね?』

『うん。でも、全然大丈夫!
ネオちゃんの呼び出しなら、いつでも何処でもOK!』

『もう!(笑)相変わらずだね!』

『だって、好きなんだもん!』

『………』
微笑んでいた嶺音の表情が硬くなり、真剣な表情になる。

『ん?ネオ…ちゃん?』


『━━━━私も、好きだよ、カナ』
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