振り返って、接吻


そんなことを考えていると、いきなり茅根が感慨深そうにひとこと発した。



「いよいよふたり、結婚するんだね」


なんとなく横顔を盗み見ると、つんと高い鼻筋から睫毛が見えていて茅根は綺麗だなと感じた。

表情がないのも手伝って、俺の容姿は、お人形のようだと評される。可愛らしい女の子ならまだしも、男なのに人形なのかと複雑に思っていた。


でも、茅根はまた違う。もっと俗世的な美青年だ。

癖のある猫っ毛は色素が薄くて、腕には学生時代につくった火傷かなにかの傷痕があったりする。それがちょっとだけ格好いいな、と俺はこっそり思っている。

なんていうか茅根は、特撮もののヒーローみたいだ。立ち振る舞いには家柄の品の良さが出ているから、ヒーローと王子様のダブルのような。え、なにそれずるい。


「なんか言ってよ、俺まだちょっと信じられてないんだから」

「あ、うん、する、結婚」

「ふは、あの儚げな美少年だった由鶴くんが旦那様になるなんてねえ」
「そりゃいつかは結婚するだろ、しかも宇田が相手なんてあんまり意外性も無いし」

「わかってるんだけど、由鶴くんってほら、絶世の美少年だったから」


茅根にとって俺は、まだ少年の面影が抜けないらしい。もう結構いい大人だってば。

ちょっと拗ねてみせると、彼はふふっと笑った。この笑い方は、学生時代からずっと変わらなくて気持ちがいい。


そんな茅根はきちんと俺と向かい合う姿勢になって。



「結婚、おめでとう」

「ありがとう」

「結婚式はピアノ弾くの?」

「どうだろ、練習するの嫌だし」

「あんなに上手いんだから、見せびらかしたほうがいいよ」

「考えてみる」


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