そして、僕はいなくなった

一日目

平日の昼間から、外に出かける。歩き方さえぎごちなくなってしまった自分という存在は、人間という形を保った化け物だ。
そこらへんに散らばった服をかき集めて、適当に仕上げたコーディネートはあまりにも不細工で、歩き方さえぎごちなくなってしまった自分という存在はあまりにも滑稽だった。子供から抜け出せないまま、大人になってしまった自分と同じような雰囲気を醸し出している化け物がちょこちょこいて、何だかそれが少し面白かった。
行く当てもなく、彷徨っていつも使っているショッピングモールへと向かう。
別に、何をするでもなくただ1階の食品売り場でパンを買い、本屋に寄って少しだけ立ち読みをして、そのままゲームセンターの前のベンチでボーッとスマホを眺めて帰る。
普通の人はもっとちゃんと毎日忙しなく用事をこなして生きているのだろう。そう思うと、少し泣きそうになる。
電車代往復480円を犠牲に行う用事としてはあまりにも空虚だった。
< 1 / 2 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop