妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
「聖女様、本日もお疲れ様でした」
「ありがとう……」

 ドルマニア王国は、魔力を多大に持つ者に聖女と呼ばれる地位を受け渡す。
 聖女の役割は他にも色々とあるが、一番の役割はこの大樹への魔力の受け渡しなのだ。

「いや、流石だね、フェルーナ。あの大樹に魔力が溢れるのが、僕でもわかったよ」
「そうですか? もしかしたら、グラッセン様が来たことによって、私も少し張り切ってしまったのかもしれません」
「おっと、それは余計なことをしてしまったかな?」
「いえ、そんなことはありませんよ」

 私の傍に、第三王子のグラッセン様が駆け寄って来た。
 彼は、私の婚約者である。聖女の偉大なる力を血に入れるため、王族と聖女は結婚するというのが通例なのだ。
 その例に漏れず、私も彼と婚約することになった。幸か不幸か、私は公爵令嬢であったため、結果的にその婚約は二重に意味があるものとなった。

 もっとも、私はこの婚約という通例に疑問を持っている。
 なぜなら、王族の中で聖女になった者が、未だ存在していないからだ。
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