妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
 私は、アグナヴァン様と同じ部屋に泊まることになった。
 婚約者である彼と同室というのは、やはり緊張するものだ。覚悟はしているが、それでも平静ではいられない。
 とはいえ、彼は今が非常事態であると言っていた。恐らく、そういうことは起こらないのだろう。

「すまなかったな……あいつらの勝手で」
「いえ、大丈夫です。一人でいると余計なことも考えていたでしょうし……」
「……そうか」

 正直、私はあまり一人になりたくなかった。
 これからのことを考えてしまうからだ。
 ドルマニア王国には、色々と思う所がある。その暗い思いを考えるのは、できれば避けたいことだ。

「……それなら、何か別の話をするとしようか。さて、何の話をするべきか……」
「そうですね……ああ、そうだ。アグナヴァン様のご兄弟のことを聞いてもいいですか?」
「む……」

 そこで、私は気になっていた事柄について質問してみることにした。
 スウェンド王国の王族は、アグナヴァン様だけではない。彼には、弟と妹がいるのだ。
 しかし、私はその二人のことをよく知らない。まだ会ったことがないのだ。

「仕事の関係上、顔を合わせてはいませんが……いずれ関わることになるでしょうし、聞いておきたくて」
「そうだな……確かに、必要なことだ」

 私の言葉に、アグナヴァン様はゆっくりと頷いた。
 私達は婚約している。ということは、二人は私の義弟と義妹になるかもしれない。そんな二人のことは、当然聞いておくべきことだろう。
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