妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
「……王国に入るようだな」
「ええ、そうみたいですね……」

 そんな話をしている内に、馬車はドルマニア王国の直前まで来ていた。
 窓から見えるのは、御者が兵士とやり取りをしている様子だ。国に入るために、色々と手続きがあるのだろう。

「……あまり実感は湧きませんが、私は祖国に帰って来たのですね」
「……ああ、そういうことになるな」

 馬車はすぐに動き出して、ドルマニア王国の内部に入っていく。
 私は、ぼんやりと考えていた。自分が、祖国に帰って来たのだと。

 このドルマニア王国から追い出されて、色々なことがあった。
 結果的にこうして生きていられる訳だが、本当にあの時はどうなることかと思ったものである。

 そういった面も含めて、私はこの王国に対して複雑な思いを抱いていた。
 だが、今はそういうことは考えては駄目なのである。私は私情を抜きにして、スウェンド王国の使者としてこの国を助けるのだ。

「当然のことではあるが……国内もひどい状況のようだな」
「ええ……」

 国内に入ってからも、国外と同じような光景が広がっていた。
 やはり、大変な状態になっているようだ。
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