妹の方が聖女に相応しいと国を追い出されましたが、隣国の王太子に見初められました。今更戻って来て欲しいなどと言われても困ります。
「……アグナヴァン様、フェルーナ嬢、お待ちしていましたよ」
「……先生!」

 そんな私の目に入って来たのは、見知った顔だった。
 トルフェニオ・パストマン教授が、私達の目の前に現れたのである。

「フェルーナ嬢、無事で何よりです」
「先生のおかげです」
「いえ、私は手紙を届けただけですよ」
「先生以外に、あの暗号を届けられる人はいませんでした。先生がいなければ、私はどうなっていたことか……本当に、ありがとうございます」

 私は、先生に感謝を伝えた。
 彼がいなければ、どうなっていたことだろうか。私は、もっと厳しい状況に陥っていたはずだ。
 全ては、先生が私の手紙を届けてくれたからである。それに私は、感謝しなければならないのだ。

「パストマン教授、お久し振りですね」
「アグナヴァン様、あなたには色々とお世話になりましたね……本当に、ありがとうございます。私の教え子を救っていただき……」
「いえ、それは私自身も望んでいたことですから……」

 続いて、先生はアグナヴァン様と挨拶を交わした。
 二人は、一応知り合いである。しかし、今までそれ程交流があった訳ではない。
 そのためか、少しぎこちない様子だ。そんな様子に、私は少しだけ安心感を覚えるのだった。
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