不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
「あの男が憎い以外の理由がいるか?
あいつは俺から大事な人を奪い、それなのにのうのうと生きていつの間にか結婚して。ふざけやがって……!
あいつは人殺しなんだよ」
和仁さんが人殺し?
「あの男だけは絶対に許さねえ」
「和仁さんは人殺しなんかじゃありません」
誰かを傷つけるようなことをする人なんかじゃない。
それだけはわかる。
「お前が知らねえだけだよ!!あの男さえいなければ、美桜お嬢さんは死なずに済んだんだ……っ!!」
歯を食いしばって悲痛な表情を浮かべていた。
ミオお嬢さん……?
誰のことかしら?
「それなのに、お嬢さんのこと忘れたかのように他の女とあっさり結婚しやがって。絶対許さねえ!!」
何だか事情はよくわからないけど、とりあえず私を人質としてもあまり意味はないと思う。
だって私はお飾りの妻なんだもの。
優しい和仁さんは心配してくれているかもしれないけど、人質としての価値があるのかどうか。
私をどうこうしようとしたところで、和仁さんにダメージが与えられることはないと思う。
それよりもこの人の言っていることが気になる。
人殺しなんて信じていないけど、過去に何かあったような気がするし……ミオという人のことも気になるわ。