不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
何となく様子の違いを察してくれたのか、和仁さんは優しく抱きしめてくれる。
「どうした?」
「聞いてもいいですか?」
「ジェシカが知りたいのなら」
やっぱり和仁さんは優しい。
私は和仁さんから少し離れ、彼のことを真っ直ぐ見つめた。
「ありがとうございます。ベッドで待ってますね」
「……わかった」
和仁さんがお風呂に入っている間、私はベッドの上で例の写真を見つめた。
あんな風にお願いしてみたものの、やっぱり聞くべきなのか迷っている。
聞かれたくないことかもしれないし、下手に踏み込んで和仁さんに嫌われたくない。
けれど、それでも知りたいという気持ちがあるのも確か。
「ジェシカ、待たせたな」
「……あ」
思わず写真を隠した。
和仁さんは私の隣に座り、優しく問いかける。
「それで、聞きたいこととは?」
「……っ」
「遠慮しなくていい」
そっと私の頭を撫でてくれる和仁さんの優しさに涙が出そうになったけど、グッと堪えた。
そして意を決して尋ねる。
「……私が誘拐された時、あの人が和仁さんのことを人殺しだと言っていたんです」
「……!」
「もちろん信じていません。でも、あの人が言っていたミオお嬢さんは死なずに済んだという言葉がずっと気になっていました。
そうしたら今日、書斎でこの写真を見つけてしまったんです」