不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
毎日が幸せで充実していたある日、書斎の整理をしていた時のこと。
「……あら?」
本棚から一枚の写真が落ちた。拾い上げてみてびっくりする。
「これ、和仁さん……?」
今より若く見えたけど、映っているのは和仁さんで間違いなかった。
その隣には黒髪の女の子が映っている。彼女は和仁さんに腕を絡ませ、笑顔を向けていた。
まるで恋人同士みたいだ。
和仁さんの元恋人ってことかしら……?
別に特別ショックを受けたわけではない。
和仁さんはあの通り見た目も中身も素敵な人だし、元カノがいたって不思議ではない。
だけど私は、何となく引っかかりを覚えた。
写真を裏返してみて、その引っかかりの正体がわかった。
「美桜と」
写真の裏にはそう書かれていた。
「この人が、ミオさん……?」
和仁さんにとっては掘り返されたくない過去かもしれない。
でも、どうしても知りたい。
あの人が和仁さんのことを人殺しだと言っていた真意が、どうしても知りたいの。
「ただいま」
「お帰りなさい」
「ジェシカ、先に寝ていいと言ったのに」
夜遅く帰ってきた和仁さんに向かってぎゅうっと抱きついた。
「ジェシカ……?」
「和仁さんにどうしても聞きたいことがあるんです」