社内恋愛を始めたところ、腹黒上司が激甘彼氏になりまして


 そしてーー私達はお付き合いすることになりました、なんて平和に話が運ぶはずもなく。

「社内恋愛とは具体的にどんなことをしたらいいんだろう。なぁ、君は分かるか?」

「そんなの分かるわけないです。社内恋愛なんてしたことないですし。勢いで言ってしまったんでしょう? 発言を取り消して下さい、私も聞かなかったことにしますので」

 突っ立って話すより、ひとまず語りながら資料室の清掃に取り掛かる。キレイ好きな部長にはこの薄暗さや散乱した物が受け付けないそうで、口と手を同時に動かす。

 そういえば部長のデスクはいつも整理整頓が行き届いていたっけ。

 本来、松下部長は理路整然と主張をし、思い付きで行動する性格じゃない。誰にでも親切で、誰にでも一本線を引いた距離感で接する節があり、元部下が出世を逃して自暴自棄に陥ろうと同情はしないと思っていた。

 いたのだが、どうも様子がおかしい。

「取り消したら君は誰と付き合うの? せっかく社内恋愛するなら朝霧レベルがいいだろう? で、そのレベルとなると僕しかいない」

「いやいや、私は身の丈に合った相手と恋愛したいんですが? むしろ部長こそ、他の女子社員と付き合えばいいのでは? 引く手あまたですよ」

「話を聞いてた? 社内恋愛するなら朝霧レベルがいい。だから僕の場合、君になるよ」
< 8 / 49 >

この作品をシェア

pagetop