神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
その15分後。

イレースにパンダ呼ばわりされて、自棄っぱちのようにチョコブラウニーを貪っていたシルナのもとに。

こんこん、と学院長室の扉を叩く者が現れた。

ん?誰だ?

「学院長先生、失礼します」

「お邪魔しますー」

やって来たのは、三年生の女子生徒が5人。

彼女達の姿を見るなり、シルナは目を見開き、ソファから飛び上がった。

「君達!良いところに!チョコブラウニーがあるよ」

お菓子をシェアする相手が現れ、この嬉しそうな顔である。

最近、放課後に学院長室を訪ねてくる生徒が若干減ってしまったからな。

まぁ、稽古場で愛想振りまいてるナジュのせいなんだが。

その為寂しんぼのシルナは、不満を募らせている。

「こうなったら、ナジュ君に対抗して、放課後に用意するお菓子の種類を3種類に増やそう」とか、真面目な顔して言ってたくらいだからな。

別にナジュは競合店な訳じゃないからな。

「あとチョコチャンクスコーンと、チョコプリンもあるよ!」

またチョコばっか。

種類を増やすのは良いけど、たまにはチョコ以外のおやつにしたらどうだ?

誰もがお前みたいにチョコが好きじゃないんだよ。

「飲み物は何にする?色々あるよ。すぐに用意、」

「あ、いえ。違うんです。そうじゃないんです」

女子生徒の一人が、スッと手で制してそう言った。

「…え?」

これには、俺も「え?」と言いそうになった。

シルナのおやつを摘み食いしに来たんじゃないのか?

「じ、じゃあ…。あっ、質問かな?授業の。良いよ、何でも教えてあげる!とりあえずおやつを食べながら…」

「あぁ、そうじゃないんです。質問はありません」

「えっ」

授業で分からなかったところを質問しに来た…のでもない。

じゃあ彼女達は何をしに、

「あ、ほらいたいた」

「いろりちゃーん。おいで」

いつの間にか。

女子生徒達の足元に、いろりがちょこんと座っていた。

…もしかして。

生徒達の目的は、シルナでもシルナのおやつでもなく…。

…いろりなのか?
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