神殺しのクロノスタシスⅤ〜後編〜
「大使館の人は、私に…『シルナ・エインリーに届けるように頼まれた』って言って持ってきたんだ」

成程。やっぱりシルナ宛なんだな。

ってことは、俺にシルナと一緒に手紙の封を開ける資格はないんだな。

あくまでこれは、シルナ宛の手紙であって…。

しかし、ナツキ様には悪いが。
 
「言っとくが、俺に出て行けって言っても無駄だからな」

シルナに用があるなら、俺に用があるのと同じだ。

シルナだけに背負わせてたまるものか。

「分かってるよ。私も一人で背負いたくないから…一緒に読もう」

よし。それで良い。

「まさか、令月達のことがバレて、責任を取れって迫られるんじゃないよな…?」

「ど、どうだろう…。そうだとしたら、大変だよね…」

大変どころじゃないぞ。

しらばっくれるか?しらばっくれて通用するだろうか?

「スパイ?は?何のこと?」ってすっとぼけるか?

それとも、素直に認めるべきなのか?

どっちに転んでも、悪い未来しか見えない。

パスポートもなしに不正入国し、更に皇宮に忍び込んだんだもんな。

言い逃れは出来ないぞ。

スパイ共の身柄を引き渡せ、とか書かれてたらどうしよう。

そのときは、今すぐ令月達を隠そう。

例えそのせいで、今より更にアーリヤット皇国との関係が悪くなったとしても。

いかなる理由があっても、俺は仲間を売るつもりはない。

そんなことするくらいなら、アーリヤット皇国と戦争した方がマシだ。

「…よし、開けてみよう」

覚悟を決めろ。

何が書いてあったとしても、俺達のやるべきことは変わらない。

仲間を守り、祖国を守る。それだけだ。

「う、うん…。開けるね」

シルナも意を決して、メールオープナーで封筒を開けた。

出てきたのは、真っ白な便箋が一枚。

そこに書いてある内容を、俺もシルナも、目を皿のようにして読んだ。

そして、二人して驚愕に目を見開いた。

さすがの俺も…これは、予想していなかった。
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