君と初恋をもう一度
あれ…?思ったより痛くない…?と思って振り向くと、なぎくんが私を支えてくれていた。


階段の下には段ボール箱から飛び出た絵の具が散らばっている。



「大丈夫です。雪代さんも、怪我はない?」


「あ、うん…」



ぶつかってきた男子生徒はすみませんともう一度謝ってから、下に落ちた絵の具を拾ってくれた。



「あんな前が見えない状態で歩いてたら危ないでしょ、何やってんの」


「ごめん…」



結局なぎくんが軽々と段ボール箱を教室まで運んでくれた。


…それにしても、さっき“楓花”って呼んでくれた?いや、気のせいだよね…。



「楓花!」


「はい!?」



突然名前を呼ばれて、思わず大きな声で反応してしまう。



「ミスコンの一次審査通ったよ!これで文化祭当日の最終審査行けるね!」


「…え?ミスコン?なんのこと?」



初音が“雪代楓花様へ。最終審査へのご案内”と書かれた紙を突き出して興奮気味に言ってきた。
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