静穏総長も、時には激しく愛したい
あの時、奏さんの姿を見て……
嬉しいよりも先に、切ないが来た。
手を伸ばせば触れられる距離にいるのに、触れない。触っちゃいけないと、何度も自分に言い聞かせた。
そして……我慢できた。快挙に近い、と思う。私が奏さんを前に、大人しくしてるなんて。
「ふくちゃん、私……もう奏さんとは関わらない事にしたんだ」
「え! 本当にそれでいいの?」
「うん。もう決めた事だから」
「澪音……」
心地いい気候の中、外で広げたお弁当を食べる。
ピクニックみたいで気持ちがいいハズなのに……
「そうか……、そうなんだね」
「うん……」
私たちの間に漂うのは、どんよりと暗い空気。
そんな雰囲気を一掃するように。予鈴のチャイムが、大きく響き渡る。
「暗い話になっちゃったね、ごめん。行こう、ふくちゃん」
「澪音……」
「あ、箸を落としちゃった」
ベンチから立ち上がり、下を覗き込んで探す。
すると地面に落ちたというのに、キレイに対になって並んでいる箸が見つかった。