私の「運命の人」
どこかぶっきらぼうに、そして乃愛とも目も合わさずに仁は言う。その横顔を見た乃愛は、「甘粕先生はいつも私の目を見て話してくれるのに」と言いたくなってしまう。

映画館にて仁の好きな監督の最新作を見た後、乃愛と仁は遅めの昼食を兼ねてカフェに入ることになった。

「映画、なかなか面白かったね」

乃愛がそう口火を切ると、自分の好きな映画を観て上機嫌になっていた仁は「だろ?あの監督の映画は全部当たりなんだよ!」と映画のことを話し出す。

機嫌がいいとこうして仁は話してくれる。しかし、乃愛は仁が黙っていても話していても、どこか心が疲れているのに気付いていた。気に入られなさい、という両親の言葉が重く伸し掛かってくるためだ。

(この人と結婚して、私は幸せになれるの?)

そう乃愛が考えた時だった。仁が口を開く。

「俺たちの入籍と式、乃愛が卒業してすぐにしたいんだけど、いいだろ?」

「えっ……」

「式場は桜屋敷家が代々挙げているところがあるから、あちこち式場を見に行かなくていいぞ。あ〜、でも式の準備って色々あって忙しそうだな。正直面倒くせぇ。ドレス選ぶ時は俺はついて行かないから、適当に選んどいてくれ」

「ちょ、ちょっと待って!」
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