冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
五章 偽りの愛が割れるとき
五章 偽りの愛が割れるとき


 そうして迎えた土曜日の午後。蛍を助手席に乗せた左京の車は世田谷区の閑静な住宅街を走っていた。

「本家?」
「そう。祖父が亡くなったあとは伯父――父の一番上の兄が当主を務めている。情報交換という名の腹の探り合いのために時々集まるんだよ」

 今向かっているのは、成城にある菅井本家の屋敷ということらしい。

「暴力団顔負けの物々しい屋敷だから、赤霧会も手を出してはこないだろう。そういう意味では、今日は安心していいぞ」

 そんなふうに言いつつも左京はさすがのプロ意識で、外に出るときは常に周囲に目を光らせている。

「赤霧会はまだ私をターゲットにしているんでしょうか」
「このところのやつらは妙に静かでな、動向が読めない。だから警戒は解くな」
「はい」

 蛍の顔が緊張でこわばったのを見て、左京は話題を変えた。

「ゆうべ、ずいぶん悩んでいたみたいだけど……よく似合っているよ」
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