冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
「簡単だ。俺は蛍を守るために動く。菅井家の手柄なんて知ったことじゃない」
「熱でもあるのか、左京。色恋に溺れた馬鹿な男に成りさがる気か」

 額に青筋を浮かべて、政平はグッと左京の胸ぐらをつかんだ。

 色恋に溺れた馬鹿な男。まったくそのとおりだが、こんな自分を嫌いじゃない。いや、これまでの自分よりずっとずっと愛おしく思える。

 左京は彼の手を振り払って言ってのける。

「考えてみたら、クソだと思っている人間のやり方を追従しようとしてたことのほうがどうかしていた。俺は俺のやり方であんたをこえてみせる」
「……結局、落ちこぼれの子は落ちこぼれってことか」

 左京は不敵な笑みで政平の顔をのぞく。

「そういえば聞きましたよ。奥さん、出ていったそうですね」
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