冷血警視正は孤独な令嬢を溺愛で娶り満たす
(愛しているから本物の夫婦になってほしい。そう言ったら、君はどんな顔をするだろう)

 男は単純で、すぐに自分に都合のいい勘違いをする。だから左京は、蛍が笑ってイエスと言ってくれる未来をひとりよがりに夢見ていた。
 
 その未来に暗雲が垂れ込めたのは菅井本家での会合を終えてからだ。その日の夜も翌朝も、蛍の様子がどこかおかしい。

「少し体調を崩してしまったみたいで」

 本人はそう言うだけだが、左京と目を合わせるのを避けているような気がする。

(菅井本家でなにか言われたのだろうか)

 だが、それも釈然としない。蛍を〝コマ〟としか見ない菅井家の人間には腹が立つが、だからこそ赤霧会の件が解決するまで彼らは蛍を大事にするはずなのだ。

 実際、いつもの彼らからは想像もできないほど愛想よく対応していた。

(今夜は早めに帰って、ゆっくり話をしよう)
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