狐火の家のメイドさん 〜主人に溺愛されてる火傷だらけの侍女は、色々あって身一つで追い出されちゃいました。
そうして、一刻もした頃合いだろうか。
既に、窓の外の日が沈みかかっている。
扉に手をかけてみたが、中からは開かないし、ここは四階なので、具合の悪い子狐を抱えて窓から降りるのも躊躇われる。
(帰りが遅いから、奥様が探してくださるかしら……)
警官に話をしてくれるだろうか。
しかし、さぎり達を連れてきた者達も、官憲の装いをしていた。そして、この豪奢な部屋。誘拐犯達は、警察が口を出せるような者達なのだろうか。
そうしてうろうろと室内を見渡し、(あのベッド際にある小さな照明、武器に使える……?)と物色していたところ、急に扉が開き、男が入ってきて、さぎりはびくりと体を震わせ、慌てて寝台で寝そべる子狐の近くに寄り添った。
男は、きょろきょろと室内を見渡し、目を凝らすようにした後、さぎりを睨みつける。