花言葉〜青い春〜


「俺、そんなにチャラチャラしてるように見える?」

「見える。」


菫は初めて出会ったときに、成海が先輩の女の子に囲まれているのを忘れはしなかった。


「あはは。心外だなー。」


成海は笑いながら、突然すっと手を伸ばして、人差し指で菫の口の端をなぞった。


「すーちゃん、ソース付いてる。」

「そ、そういうのが!チャラチャラしてるって言うの!今日も学校で髪なでたし!」


不覚にも今も触れられた瞬間、菫はドキッとした。男の子に触られるなんて慣れてない。慣れてないから、体が必要以上に動揺する。


「あはは。すーちゃんって可愛いね。」

「なっ……バカじゃない!私は可愛くなんかありません!可愛いのは桜の方!」


菫の言葉に成海は急に真顔になり、ハンバーグに刺すフォークの手を止めた。


「比べんなよ。すーちゃんはすーちゃんだよ。」

「……分かってるわよ、そんなこと。」


嘘だった。


菫は成海から視線をそらし、ナプキンで口元を拭った。可愛いなんて桜にしか向けられない言葉だと思っていたのに。







< 52 / 77 >

この作品をシェア

pagetop