完全包囲 御曹司の秘めた恋心
「環奈さん」

「は、はい」

まともに顔を見れないまま返事をする。

「素晴らしい走りでしたね。こんな感動を味わったのは久しぶりです。貴女のおかげです」

「え?」

「貴女がいなければ、競技場に足を運ぶこともなかったでしょう。貴女が僕を連れてきてくれた。ありがとう」

「それは、どういうことでしょう? 連れてきてもらったのは私の方です。貴方は何をお考えなのですか?」

彼は何も答えず、ただ柔和笑みを浮かべている。

「ゲイルさん?」

「環奈さん、場所を移しましょう。そこで全てをお話しします」

「全て?」

「はい、全て。でもその前に、まだ僕に付き合ってもらいます」

「かしこまりました」

私は彼に手を引かれ、競技場を後にした。
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