最後の花火
いつからだろう。夏希に対して、「好き」と特別な気持ちを抱き始めたのは。きっともう十年近く片想いしていると思う。ずっと近くにいたせいか、この気持ちを伝えることは未だにできていない。

「ん?これ、花火じゃん!そういえば明日だっけ?花火大会」

夏希が私の描いた絵に気付き、キャンパスに駆け寄って花火を見つめる。私は、これがラストチャンスだと思い、言った。

「行こうよ、花火大会!日本での最後の思い出として!」

声は情けなく震えていたかもしれない。指先は美術室は蒸し暑いというのに何故か冷えていて、肩も小刻みに震えていた。かっこ悪い。ダサい。それでもーーー。

「うん、行こう!俺も誘おうと思ってたんだよな〜。ほら、俺たちって幼なじみっていう特別な関係じゃん?」

夏希は、その名に相応わしい真夏の太陽みたいな眩しい笑顔を向けてくれた。



夏の終わりが近付くと、私たちが住んでいるこの街は活気が溢れる。花火大会が開催されるからだ。一万発以上の花火が打ち上げられるため、県外からも見に来る人が多い。
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