孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
「はあ。もういい。お前が花嫁だ」

「や、やったー! ショコラ聞いた!? 花嫁だって!」
「聞いたわよ。まあ花嫁の仕事は夜からだけどね」

 ショコラはフレンチトーストに生クリームをたっぷりつけて口に入れてから微笑んだ。アルト様は黙々と食べているけど照れているのはもう気づいている。

「結局花嫁の仕事ってよくわかっていないわ」
「最初に言っていたでしょう? 魔力をわけるだけよ。人間の魔力に触れる事で衝動を抑える事ができるから」
「アルト様は夜がくると、暴れん坊になるわけですね」
「そうそう、暗黒期はそんな感じ」

 ショコラが笑う隣で「暴れん坊って……」とアルト様が呆れた顔をしているけど、他に表現が思いつかなかったんだもの。

「何かあったら祈ってちょうだい。花嫁の祈りは私にも届くはずだから」

 いつの間にかショコラの皿は空っぽになっていて、人間の姿からいつものわんこに戻っている。いつもなら食後のお茶をゆっくり飲むのに。

「どこかに行くの?」
「ええ。今日からしばらく森で過ごそうと思っているの。魔物と、一応王国側も警戒したくて」
「国を?」
「念のためね。魔物が王国側に入ってしまえば火種になりかねないから」

 ショコラは私の足元までやってくると、私を見上げて真剣な表情になった。
< 109 / 231 >

この作品をシェア

pagetop