孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
「じゃあこのお天気もすぐに終わってしまうの?」
「そうねえ。明日はまた暗闇かも。でも、暗闇の割合が少なくなってくると暗黒期も終わりに近づいているから。もしかすると早めに終わるかもしれないわね」

 私は玄関に置いてあるプランターの近くに向かった。まだ芽が出てない土だけのプランター。

「暗黒期、植物たちが気になっていたのよ。でも、たまに日が当たってくれるなら植物たちも安心だわ」
「そうね。お花たちはお日様が必要よね」
「どちらにせよ梅雨だから、日照時間が少なくても大丈夫なものを選んでいたんだけどね」
「このまま暗黒期が早めに終わるといいわね」

 ショコラとアルト様もプランターのもとまでやってきて心を寄せてくれている。

「魔物たちもかなり落ち着いた様子よ。その感じだと二人は仲良くやってるみたいね」
「バッチリラブラブです!」

 私はアルト様の手をとって繋いでみせる。否定もせず振り払うこともせずにそのままにしているからショコラはアルト様を散々からかった。

 ――幸せだった。二人と一匹。迫害された土地でのスローライフだけど。穏やかな幸せな日々。

 だけど、私は忘れていた。魔人の生き残りがいることを国が知っていることを。
 そして知らなかった。暗黒期の終わりに向けて、国が動いていることを。
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