孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
「物事には様々な側面がある。どの立場から見るかによって正しいことかは変わる。国王がそう判断したのなら、国にとっては正しいことなのではないか?」
「……それがわからないから、知りたいんです。正直僕はまだまだ勉強不足です。何も知らないのです。だから、教えてほしいんです」

 僕が頭を下げると、叔父は眉を下げて困った表情を作った。

「なぜ私を頼ってくれた?」
「幼いながら叔父上は優秀で国に必要な方だと思っていました。公正なあなたが不正に手を染めるはずがありません。あなたは知っているから。知っているからこそ、国の中核から外された。そう思ったからです」
「マティアスは純粋だな。そうあって欲しいという思い込みではないのか?」
「叔父上、この国は一部の貴族のためにあるのですか?」

 カップに口をつけて小さく微笑んでいた叔父はこちらを見た。

「なるほど。わからないなりに色々と調べてはいるのか」
「はい」
「……君たちを見たことがあるな。――おや、君は宰相の息子だろう。父でなくマティアスの考えに賛同しているのか?」
「ええ。以前の私なら父と同意見だったかもしれません。でも私は――」

 そう言って彼はリイラに目線を向ける。いつも口を一文字に結んで頑固で偏屈な彼がリイラと接することで驚くほど柔らかい表情をするようになった。
 他の三名も同様だ。彼らは秀でたところがあるが「国を変えたい」という僕の決意に賛同してくれる者とは思えなかった。マイペースが過ぎていたり、弱気だったり、一匹狼だったり。
 彼らが僕と共にここまできてくれたのは、リイラの影響だ。
 そして、僕も。

「ふむ、わかった」
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