孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
 叔父は僕たちの表情を見て頷いた。

「マティアスの想像通りだ。この国は一部の貴族のためにあると言ってもいいだろう」
「平民も皆、魔力があるのですか?」
「そうだ。彼らに力があることを教えず、貴族だけの特権としている。平民だけでない。アロバシルアの入学許可が届く人間――いや、家は決まっている」
「政敵には届かないわけですね」
「そうだ。魔力は強大だ。管理せねば脅威になる」

 やはりそうだった。リイラが特別だったわけではない、リイラや過去の特別生徒たちは『白の花嫁』候補として、用意されていただけだ。

「魔人をせん滅と言ったか。魔人は二十年前に滅ぼしているはずだったが。生き残りがいたか?」
「はい。国は生き残りは一人か二人だと考えています」
「なるほど」
「叔父上、魔人とは滅ぼすべき者なのでしょうか?」
「マティアスはそうは思わないんだな」

 叔父は僕の質問にすぐに答えてはくれず、一つずつ僕に確認する。確かめるように。
 僕はほんの少し息を吸って、大きく頷いた。

「魔人は魔物の管理をしていると叔父上から習いました。例え生き残りが少なくとも、魔物の数を考えればいくらでも復讐もできると思うのです。それを考えると、人間を魔物から、いえ、魔物を人間から守っているのではないかと思いました。」
「……その考え方は甘く希望も混じっているが、私も同じ考えではある。二十年魔物が人間を襲っていないことで、生き残りがいるとは思っていた。国は森の結界を強めたから、魔物は穏やかだと結論づけていたが」
「僕は魔物を見たことがないのですが、叔父上はありますか?」
「私は魔物の研究をしていたんだよ」
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