孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜

「なんだ」

「そもそもどうして魔人はこんな森の奥に住んでいるんでしょうか。二十年前に国は魔人を裏切りましたが、それまでは花嫁行列はきちんと行われていたんですよね。それって人間と魔人の中に契約があったってことですよね? 魔人は魔物を管理してくれている立場ですし、戦闘力でいっても互角以上でしょう。どうしてこんな森に追いやられているのかわからなくて」

「……俺も伝聞でしか知らないが。かつて何百年も前の昔、魔人は栄えていた。アイノがここに初めて来たとき言っていただろう、俺のことを魔王を。イルマル王国ほど大きくはないが村くらいの土地と人口はあった」

 ゲームの魔族の規模はそれくらいだったはずだ。大きくはないけれど一つの街として成り立っていて、アルト様は魔王だった。

「千人ほどの魔人がいて、それと同じだけの人間の花嫁が必要だ。魔の国はイルマル王国の海に浮かぶ孤島にあったから、毎年何十人もの、いや何百人もの人間の女が攫われた。暗黒期など関係なく好きな時に攫ってきては子を産ませ殺してを繰り返していた」

「なんだか想像ができないです」

「昔の魔人は魔物に近かったと言われている。何度も人間と交わりかなり人間に近くなってきたのではないか」

 私の中で魔人はアルト様だけだから全く想像はつかなかった。
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