孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜


「笑ってお別れしたいって言ったのに。もう、あの時みたいに心残りができちゃうわよ。あと少しで魔力が消えちゃうわ」

「……ねえ! 少しでも魔力を残せないの? 二十年前の方法みたいに!」

「瘴気の勢いが強くて魔力をどんどん消されていくのがわかるわ、私にある魔力を吸って自分の力に変えているみたい。きっと私の魔力を吸い終えたらこの煙も消えるわね」

 金色の炎は紫の煙に巻かれてどんどん小さくなって、今にも消えてしまいそうだ。だけど、金色の炎が小さくなるに伴って紫の煙も小さくなっていく。ほとんどショコラの魔力を吸いつくしてしまっているのだろうか。

「欠片でもいいから、ショコラの魔力が残っていれば、なんとかならないの……」
「……そうか。――ショコラ、今から攻撃してもいいか」

 私の呟きにアルト様が反応した。

「え?」
「瘴気を攻撃して燃やし尽くす。お前の魂にもダメージが行ってしまうと思うが、欠片くらい残せないか、魔力を」
「なんだかすごい難しい注文をされているわね」
「一つ可能性があるとすれば、それしかない。呪いを浄化することができないなら、ショコラごと燃やす。だから欠片だけでも残してくれ」

 アルト様は金色の炎に向かって手を伸ばして、私を見つめる。

「アイノ、ショコラの魔力に、魂に、防護魔法をかけてくれ。イメージするんだ、ショコラを守る」

 アルト様は私の背中に手を置いた。じんわりと熱が伝わってくる。
 大丈夫。私の魔力は暗黒期を経て強くなってる。アルト様からたくさん受け取っている。
 アルト様が教えてくれた、魔法はイメージすることが大事だって。ショコラを守りたい気持ちは、何よりも強い。

「いくぞ」
「はい……! レンド・イルース!」

 私の魔法が金色の炎を黄色く包んで、アルト様の放った大きな青い炎が紫と金色にぶつかった。
 部屋はいろんな色が混ざり合って激しく光り、前が見えない。衝撃に立ってる場所が揺れるけれど踏ん張って。とにかくショコラを想った。ショコラを守りたいと願った。
 最終的に全ての色がぶつかって真っ白になり弾け飛んだ。部屋はまばゆく光り、パラパラと金色が降ってくる。……紫色は見えない。

「ショコラ……? ショコラ!」
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