孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜


 翌日。
 臨時魔法士たちが何名か城に戻ってきた。
 あの日バルコニーから城内に侵入したショコラが、広間の隣にある空き室と魔の森の城を繋いでいてくれたのだ。

 彼らの説明によると。あの場で、マティアス様が新国王になると宣言したらしい。
 国民はかなり動揺していたけれど、あの場にいたのは平民ばかりだ。マティアス様の語る「平等な世界」を信じたいという声も多かったのだとか。
 元国王やあの場にいた国の中心人物は投獄された。彼らはマティアス様の掲げる「平等な世界」に反対する家ともいえる。そして私を襲ったのは第二王子らしく彼もまた投獄されている。
 あの場にいなかった大臣や元国王派の家も、元国王と第二王子がいない今おとなしく従うしかないだろう。
 ……かなり強引な手ではあるし、現時点では国のトップが入れ替わっただけだ。マティアス様の語る世界は美しいけどきれいごとも多い。
 これからどうなっていくかは、正直わからない。
 だけど、これは元々乙女ゲームの世界。正義はきっと勝つし、ちょっとご都合主義だって許される……そう信じたい。

 マティアス様を始めとする主要人物たちは、こちらに戻ってくることはもうなさそうだ。また会うときは国が落ち着いてから、そう約束していた。
 彼らにはやるべきことが多すぎる。臨時魔法士たちも状況を説明するために戻ってきただけで、報告だけ済ませるとすぐに王都に戻っていった。

 臨時魔法士たちは、嬉しそうに語っていた。これからも王子直属の軍として国に重用してもらえることを。
 きっと彼らの存在は国の力になるし、平民と貴族の壁がなくなる第一歩になるだろう。

 そして、リイラが国に狙われることもなくなった。
 リイラたち家族は元の生活に戻ることになり、リイラとも一時お別れだ。でも今回のお別れは寂しくない。
「次、魔の森に遊びに来るときは門から堂々と入ってきてね」そんなことを言えるのだから。
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