孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
 門前払いにされたあの日からたくさん積み上げてきた日々がある。使用人としてでもいいから認められたくて、まずは胃袋を掴もうと料理を頑張って。
 自分の心の潤いのために花を育てたら、アルト様も楽しんでくれた。
 二人と一匹の穏やかで小さな幸せがたくさんスローライフ。
 それから訪れた暗黒期。金色の瞳のアルト様と青色の瞳のアルト様に翻弄されて。
 花嫁の意味を考えて、苦しくなって疑ったりして。そんなふうにして四季を乗り越えてきた。

 そして、これからも四季を続けていくんだろう。
 クリスマスを終えたら春に向けて種を巻いて春になったらこの墓地はたくさんの花が咲き乱れてアルト様の家族たちを見守る。
 梅雨がまた訪れたら、暗黒期を思い出して切なくなりそうだなあ。

 きっといつか家族は増えて、魔物たちも増えたりして。
 人間との関わりも増えていく。
 二人と一匹だったここでの暮らしが広がっていく。

 何も変わらないようでいて、変わっていくことがある。

 光の粒が私とアルト様をくすぐっていく。アルト様はそっと私の手を繋いだ。
 手を繋ぐだけでドキドキして心臓が飛び出しそうな頃が懐かしい。もちろん今もドキドキするけど、ほんのり胸をあたためて、身体が愛しさで包まれる。いつのまにかこの恋は愛に変化していた。

「そろそろ戻るか」

 アルト様が城に目を向けるから、私は「はい!」と返事をした。

 自由になった私たちはこれからどこへでもいける。
 でも魔の森に必ず帰って来る。私たちは自分の意思でここにいる。
 アルト様の穏やかな海の瞳が私を見つめる。その幸せを噛み締めて、私たちは光かがやく場所に戻った。
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