孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
「……好きにしろ」

「ありがとうございます、アルト様、ショコラ! 料理頑張りますから! それに使用人として使ってください! 私一通りの家事もできますし! 教えてもらえれば魔王の仕事も手伝います!」

 自分を売り込む為に仕事、と言ってみたけど。
 そういえば魔王の仕事って一体なんなのだろうか。

 考えてみると魔王の仕事ってよくわからない。色々な物語に出てきた魔王を想像しても説明できない。RPGに出てくる悪役魔王なら、人間を襲うことが仕事? 

 でもフォスファンの魔族は、暗黒期以外は人間に干渉しないし……。それなら魔族の王として、領主のように領地経営?
 だけど、魔人はアルト様しかいないらしい。この国で。

 ということは、なんの仕事をして、どうやって生計をたてているんだ?

「うふふ。色々考えてるみたいだけど残念ながら仕事はないわよ」

 ショコラはおかしそうにこちらを見て笑っている。アルト様は相変わらず不機嫌に口をつぐんでいるだけだ。

「え?」

「アルトは何も仕事していません」

「何も?」

「別に働かなくても、お金が必要な場面もそんなにないしね。アルトはこの家から出ることもない」

 それは……つまり……ストレートに言うと、引きこもり ではないか?


「じゃあ毎日何をしているんですか?」

「何もしていない」

 私の疑問にアルト様が答えてくれる。

「何も?」
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