孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜
「ああ。命つきるまで毎日代わり映えのない一日を繰り返すだけだ。死んでるのとたいしてかわらない」

 暗っ!!!
 そうだ、アルト様は暗い人だった。毎日退屈で寂しくて、そこに花嫁がきたから余計に執着してしまったんだ。ゲームのアルト様には率いる魔人や魔物がいてたから何やら執務もこなしてたけれど。


「あはは、アイノ。あなた顔に出てるわよ。この子ずっとこうなの、死にたがり屋さんなのよ」

 ショコラがからかうようにアルト様を見た。死にたがり……?

「はあ。――あ、でも私がお世話になる分、飲食代がかかってしまいますよね。私が働きましょうか」

「家には必要のない宝飾品が多すぎる、余裕で暮らせる」

「う……なるほど」

お金は十分ある引きこもりらしい。

「何か特別なことをする必要はない。ここには何もないぞ、それが嫌なら国に帰るんだな。ショコラ、頼んだぞ。俺は部屋に戻る」

 話は終わったとばかりにアルト様は立ち上がり、こちらに一瞥くれることもなくさっさと部屋から出ていってしまった。ショコラはその様子を見守ると私を見上げた。

「じゃあ私は買い出しに行ってくるわ。掃除道具はバスルームにあるから使ってくれる? ええとそれから……」

 ショコラは私の膝にぴょこんと登ると、私の唇に肉球をポスンと当てた。毛がさわさわと唇に触れた後にむに、とした柔らかさが伝わる。肉球だあ……。
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