孤独な悪役魔王の花嫁に立候補します〜魔の森で二人と一匹が幸せを掴み取るまで〜


「ん、これ美味しい!」

 今日も女の子の姿になっているショコラの口がハフハフと動く。毎日美味しそうに食べてくれて作りがいがある。

 今夜のメニューは白身魚のワイン蒸し。野菜ときのこをたくさん入れたので一品でもボリュームたっぷりメニューだ。しっかり蒸した野菜は柔らかいし、魚の旨味が染み込んでいて美味しい。

「アルト様はどうですか」

 ショコラの隣で無言で食べているアルト様を見た。日中ずっと自室に閉じこもっていて顔を合わせることはないけど、三食きちんとダイニングにやってきてくれる。

「悪くない」

 皿を見ると魚はもうなくなっていて、端のほうに千切りにんじんが固まっている。好きなものは先に食べる派かも。

「人参お嫌いなんですか?」

「嫌いではない。ただ人参の必要性はわからない」

「少し甘みを足してくれるから、全体的に優しい味になるんですよ」

「アルト人参嫌いなのよ」

「嫌いではない」

 ムキになったアルト様は残りの人参を全て口に入れた。ほんのすこし眉間にシワが寄せて「嫌いではない」ともう一度宣言した。
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