まがいもの令嬢なのに王太子妃になるなんて聞いていません!
「私のせいなんです。公爵様にパトリシア様の素性を教えるように言われて――」

 それは二日前のことで、エイミは顔見知りの従僕に『君を待っている人がいるから』と王城の一室に連れていかれたそうだ。

 中にいたのはハイゼン公爵で、呼ばれた理由がわからず困惑したという。

『王太子妃殿下の侍女殿、久しぶりですな』

『えっ、あの……』

『いや、違った。オベール男爵と顔立ちが似ているゆえ、初めて会った気がしない。男爵とは長い付き合いだ』

 エイミの父親であるオベール男爵は領地を持たず、製粉工場で雇われ社長をして子だくさんの家族を養っている。

 その工場のオーナーがハイゼン公爵なのだそうで、エイミはこの時に初めて知った。

『父が大変お世話になっております』

 かしこまって挨拶をすれば、公爵がニタリとした。

『妃殿下のご母堂が平民ではないかという噂がある。実際はどうなのか、侍女なら当然知っているはずだ。教えたまえ』

『わ、私はなにも――』

『しらを切るなら、お前の父親を解雇する。いいんだな?』

 エイミは長女で弟と妹が六人もおり、生活は苦しい。侍女の給金はほとんど実家に仕送りしていると聞いた。

 父が失職すればまだ幼い弟妹が飢えると思い、パトリシアの出自を明かしてしまったという。

「私のせいで、パトリシア様をこのような目に……」

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