財閥御曹司とお見合い偽装結婚。
「……すまない。散々、愛さないでいいと言ったのに俺は最初から下心があった。気持ち悪いよな」
そう言って彼はソファから立ち上がってどこかに行こうと動き出そうとしたから私は彼の服の裾を掴み引っ張った。
「翠翔さん。違うくて……全然、気持ち悪いなんて思ってないです。なんなら私の方が気持ち悪いというか……」
「え?」
「実のところ、翠翔さんとそんな会話しただなんて覚えていなくて……ですが、私もお茶席に出た時あなたを見て一目惚れしました。名前も、どこの人なのかも知らないまま片想いをしてました。結婚をしたのだって、翠翔さんと一緒にいたかったから。少しでもそばにいて、できれば好きになって欲しくて……私の方が下心とてもありました」
私の方が騙していた方だ。愛さなくていいと言われてそれを了承して偽装結婚を受けた。こんなチャンス、今しかないんじゃないかと思ってしまった。