凄腕外科医は初恋妻を溺愛で取り戻す~もう二度と君を離さない~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】

 褒められているのがわかっているのかいないのか、はたまたシリアルに集中しているのか祐希はやけに難しい顔をして口を動かす。
 アップルジュースもこくこくと飲み、けれどその間も難しい顔をしていた。

「祐希?」

 不思議に思い話しかけるも、表情は変わらない。
 ややあって、トレイいっぱいにドーナツやサラダ、フレッシュフルーツをのせて帰ってきた茉由里を見つけ、祐希の顔が緩む。緩んでそのまま泣き出した。

「ゆ、祐希?」

 茉由里が慌てて椅子から祐希を抱き上げた。「マーマ!」と言って茉由里に抱きつき泣く祐希は、どうやら茉由里がいなくなって不安になってしまっていたらしい。ずいぶん懐かれていると思っていたけれど、まだまだらしかった。

「祐希、悪い。寂しかったのか、いい子すぎて気が付かなかった」
「あ、パパ、祐希がいい子だったって言ってるよー。よかったね」

 茉由里の膝であやされ、ようやく祐希が泣き止む。手を伸ばして頭を撫でた。

「ごめんな、祐希」

 そう言えば、祐希は目を瞬いてから茉由里に抱きついて、はにかんだ笑顔を見せる。これは僕のママだよ、と自慢しているような表情がたまらなくかわいらしい。

「よかったなあ」

 茉由里が帰ってきたことで落ち着いたら祐希は、自らチャイルドチェアに座りたがった。シリアルを再開しようとスプーンを持つと、茉由里が慌てたように「宏輝さん」と俺を呼ぶ。

「いいよ、私あげるから。先に食べて」
「いや、ベーグルサンドだし片手でいいから」
「でも……」
「普段、俺、あまり家にいないだろ。その間茉由里が世話してるんだから、休みの日は俺がやるよ」

 そう伝えてから続ける。

「それに少し時間をあけてから会うと、かわいさが違うんだ。かわいいのは同じなんだけれど、よりかわいいというか」

 茉由里が不思議そうな顔をしている間に、俺は祐希にシリアルを再び食べさせ始める。茉由里は「無理しないでね」と微かに笑い、自分も皿の食べ物に手をつけ始めた。ローストビーフやオムレツといった日本でもよく見かけるものから、数種類のグラノーラや燻製ハム、数種類のベーカリーなどを少しずつ、けれど種類はたっぷりと選んだようだった。

「これなんだろう?」

 茉由里がカクテルグラスを俺に向ける。グラスには細かく砕かれた氷の上に、白いとろりとした果肉が置かれている。

「これがギュウシンリだよ。今が旬らしい」
「へえ?」

 どんなものかな、とひと口食べた茉由里が目を丸くする。

「おいしい……! アイスクリームみたい」
「へえ。ひと口くれ」

 俺は祐希みたいに口を開ける。茉由里がぽかんとしたあと、頬をこれでもかと赤くする。

「そ、そんな。宏輝さん」
「いいだろ? ほら」

 左手にベーグルサンド、右手に祐希のスプーンを持っているのを掲げてみせる。

「俺も食べてみたい、その甘い果物」
「も、もう……」

 茉由里は「すぐからかうんだから!」と唇を尖らせつつも俺にひと匙の果肉を運んでくれた。
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