魔獣鑑定士令嬢は飛竜騎士と空を舞う
リューカーンの「巣」から飛び立って邸宅に戻る最中、2人はリューカーンの鱗について話し合った。
「リューカーンから話しかけてくるようなことはなさそうだがな」
「そうですね。でも、折角なので5年程度は持ち歩いています」
と、ナターリエは嬉しそうだ。
「5年過ぎたら鱗を売れ、と言われたが、これ、価値がわかる商人がいるのかな……その、疑っているわけではないが、ナターリエ嬢が言っていた盾やら鎧帷子やらを作るのも、ちょっと眉唾というか……」
「鑑定スキルがある者がいれば、リューカーンの鱗だとわかるはずです」
「なるほど、鑑定スキルか」
それもなかなか見当たらないスキルなのだが、とナターリエは言葉を濁す。
「でも、どこで拾ったのかと聞かれれば、ずっと家にあったと言えば良いかと」
「そうか。じゃあ、役に立ちそうだな」
「そうですね。売らなければ、こう、額にでも入れて、飾っておいてはいかがでしょうか」
「額に入れて飾るか、何か宝石箱のようなものにでもいれるか、どちらかになるだろうな……」
「なんにせよ、嬉しいですね。わたし、絶対毎日持ち歩きます」
そう言って笑うと、ヒースも「そうだな」と頷き返して「お守りみたいなものだな」と笑った。
「それにしても、ナターリエ嬢と共にいてよかった。俺だけでは、きっとリューカーンとうまく話も出来なかったと思うしな」
「まあ、そんなことないですよ。でも、そうですね。少しはお役に立ったのかと思えば、嬉しいです」
「少しどころではない」
きっぱりと告げるヒース。
「本当に、役に立っている。ありがとう」
改めての礼に、ナターリエは驚きつつも微笑んだ。その表情をヒースは見ることは出来なかったが、きっと伝わっているだろうとナターリエは勝手に思う。
「あなたが、魔獣鑑定士になってくれて、そしてリントナー領に来てくれて本当に助かっている。このまま……」
「このまま、ここで魔獣たちを見ていられたらいいのですが」
ほぼ同時にナターリエはそう言ったので、ヒースが「このまま」と言葉を続けたことまでには気が付かなかった。ごうごうと風の音で、互いの声が切れ切れに聞こえる。
「本当にそう思うのか」
「はい。それに……」
と、言葉を続けそうになって、ナターリエは慌てて「いえ、なんでもありません」と言った。
(何を言おうとしたの、わたし……)
かあっと頬が赤くなる。
(このまま……そんな、ヒース様に負担を強いるようなことを……いえ、そうじゃなくて……)
「なんだ? 何か言ったか?」
そう言って、ヒースは体を前傾姿勢にして、前に座るナターリエの耳元で声をあげる。
「わあ! いえ、いえ、なんでもありません!」
「? そうか」
ヒースはそれ以上追及をしなかったので、ナターリエはなんとか事なきを得た。
(このまま、ヒース様と一緒にいられたら、だなんて……)
突然ふわりと浮かんだその言葉。
(どうかしているわ……)
ナターリエは、ぎゅっと鞍についている取っ手を掴んだ。ぎゅっと、ぎゅっと、強く。
「リューカーンから話しかけてくるようなことはなさそうだがな」
「そうですね。でも、折角なので5年程度は持ち歩いています」
と、ナターリエは嬉しそうだ。
「5年過ぎたら鱗を売れ、と言われたが、これ、価値がわかる商人がいるのかな……その、疑っているわけではないが、ナターリエ嬢が言っていた盾やら鎧帷子やらを作るのも、ちょっと眉唾というか……」
「鑑定スキルがある者がいれば、リューカーンの鱗だとわかるはずです」
「なるほど、鑑定スキルか」
それもなかなか見当たらないスキルなのだが、とナターリエは言葉を濁す。
「でも、どこで拾ったのかと聞かれれば、ずっと家にあったと言えば良いかと」
「そうか。じゃあ、役に立ちそうだな」
「そうですね。売らなければ、こう、額にでも入れて、飾っておいてはいかがでしょうか」
「額に入れて飾るか、何か宝石箱のようなものにでもいれるか、どちらかになるだろうな……」
「なんにせよ、嬉しいですね。わたし、絶対毎日持ち歩きます」
そう言って笑うと、ヒースも「そうだな」と頷き返して「お守りみたいなものだな」と笑った。
「それにしても、ナターリエ嬢と共にいてよかった。俺だけでは、きっとリューカーンとうまく話も出来なかったと思うしな」
「まあ、そんなことないですよ。でも、そうですね。少しはお役に立ったのかと思えば、嬉しいです」
「少しどころではない」
きっぱりと告げるヒース。
「本当に、役に立っている。ありがとう」
改めての礼に、ナターリエは驚きつつも微笑んだ。その表情をヒースは見ることは出来なかったが、きっと伝わっているだろうとナターリエは勝手に思う。
「あなたが、魔獣鑑定士になってくれて、そしてリントナー領に来てくれて本当に助かっている。このまま……」
「このまま、ここで魔獣たちを見ていられたらいいのですが」
ほぼ同時にナターリエはそう言ったので、ヒースが「このまま」と言葉を続けたことまでには気が付かなかった。ごうごうと風の音で、互いの声が切れ切れに聞こえる。
「本当にそう思うのか」
「はい。それに……」
と、言葉を続けそうになって、ナターリエは慌てて「いえ、なんでもありません」と言った。
(何を言おうとしたの、わたし……)
かあっと頬が赤くなる。
(このまま……そんな、ヒース様に負担を強いるようなことを……いえ、そうじゃなくて……)
「なんだ? 何か言ったか?」
そう言って、ヒースは体を前傾姿勢にして、前に座るナターリエの耳元で声をあげる。
「わあ! いえ、いえ、なんでもありません!」
「? そうか」
ヒースはそれ以上追及をしなかったので、ナターリエはなんとか事なきを得た。
(このまま、ヒース様と一緒にいられたら、だなんて……)
突然ふわりと浮かんだその言葉。
(どうかしているわ……)
ナターリエは、ぎゅっと鞍についている取っ手を掴んだ。ぎゅっと、ぎゅっと、強く。