魔獣鑑定士令嬢は飛竜騎士と空を舞う
リューカーンの谷間には、ヒースとナターリエ、それからゲオルグの竜に乗ったコルトが向かった。下降していくと、リューカーンとその妻――もちろん妻もリューカーンなのだが――は2頭とも目覚めており、上を見上げている。そして、妻の傍には、他の子どもたちが眠っているようだった。
『苦労をかけた』
「まったくだ」
ヒースは苦々しく笑って、檻から子竜を出す
「一頭、衰弱している」
『ああ、大丈夫だ。もともと弱い個体だが、眠れば回復するだろう』
番のリューカーンが首を伸ばして、弱弱しく歩き出した一頭の首を咥えて持っていく。もう一頭は元気よく動き出したが、それをリューカーンが首根っこを咥えて自分の体の脇に落とした。
『もう当分ここから出れないように、結界を張った』
「結界? まあ、そんなことも出来るんですか」
『本当はやりたくないのだ。それをすれば、長く眠ってしまうのでな……』
「そうなのですね。何にせよ、見つかって良かったです。元気に育ちますように」
ナターリエがそう言って笑うと、リューカーンは『ああ』とだけ答えた。
『ありがとう』
「!」
もう一頭の番からの念話だ。ヒースが「どういたしまして」と応えたが、会話はそれだけだった。
『何か、お前たちに礼をしなければいけないのだが、わたしには鱗しかないのでな……』
ヒースは「いや、別にそれは……」と断ろうとしたが、ナターリエははっきりと
「では、鱗をください」
と要求をした。
『それで良いのか?』
「はい。国王陛下にお渡しします。リューカーンが本当に生きているという証拠が、わたしとヒース様しか持っていないのはちょっと問題があるかなぁと思いまして……」
『よくわからんが、やろう。ならば、少し立派なものにした方が良いのか?』
「えっ、本当ですか」
そう言うと、リューカーンはナターリエたちに渡したものとは比較にならない、大きな場所から鱗を抜いた。『ぐう……』と声が出ていたので、どうやら少し痛みを伴ったようだ。
『一枚だけな』
と、少しケチくさいことを言うので、ヒースは笑いそうになったが必死にそれを堪える。
「ありがとうございます! すごい。大きくて立派です!」
『傷をつけたようで、申し訳なかったのでな』
「あ……」
ナターリエは、慌ててヒースに「わたし、そんなに見るからに傷ついています?」と尋ねた。ヒースは苦々しく「ああ、早く帰って手当てをしよう。治癒術師がいるので、綺麗になるだろう」と言う。
「ああ、もう夜になる。急がないと。それじゃあな。また何かあったら、声をかけるといい」
『ないようにはする』
「そうだな。それが一番だ」
「それでは、失礼いたしますね」
そう言ってリューカーンに見送られ、彼らは帰っていった。
『苦労をかけた』
「まったくだ」
ヒースは苦々しく笑って、檻から子竜を出す
「一頭、衰弱している」
『ああ、大丈夫だ。もともと弱い個体だが、眠れば回復するだろう』
番のリューカーンが首を伸ばして、弱弱しく歩き出した一頭の首を咥えて持っていく。もう一頭は元気よく動き出したが、それをリューカーンが首根っこを咥えて自分の体の脇に落とした。
『もう当分ここから出れないように、結界を張った』
「結界? まあ、そんなことも出来るんですか」
『本当はやりたくないのだ。それをすれば、長く眠ってしまうのでな……』
「そうなのですね。何にせよ、見つかって良かったです。元気に育ちますように」
ナターリエがそう言って笑うと、リューカーンは『ああ』とだけ答えた。
『ありがとう』
「!」
もう一頭の番からの念話だ。ヒースが「どういたしまして」と応えたが、会話はそれだけだった。
『何か、お前たちに礼をしなければいけないのだが、わたしには鱗しかないのでな……』
ヒースは「いや、別にそれは……」と断ろうとしたが、ナターリエははっきりと
「では、鱗をください」
と要求をした。
『それで良いのか?』
「はい。国王陛下にお渡しします。リューカーンが本当に生きているという証拠が、わたしとヒース様しか持っていないのはちょっと問題があるかなぁと思いまして……」
『よくわからんが、やろう。ならば、少し立派なものにした方が良いのか?』
「えっ、本当ですか」
そう言うと、リューカーンはナターリエたちに渡したものとは比較にならない、大きな場所から鱗を抜いた。『ぐう……』と声が出ていたので、どうやら少し痛みを伴ったようだ。
『一枚だけな』
と、少しケチくさいことを言うので、ヒースは笑いそうになったが必死にそれを堪える。
「ありがとうございます! すごい。大きくて立派です!」
『傷をつけたようで、申し訳なかったのでな』
「あ……」
ナターリエは、慌ててヒースに「わたし、そんなに見るからに傷ついています?」と尋ねた。ヒースは苦々しく「ああ、早く帰って手当てをしよう。治癒術師がいるので、綺麗になるだろう」と言う。
「ああ、もう夜になる。急がないと。それじゃあな。また何かあったら、声をかけるといい」
『ないようにはする』
「そうだな。それが一番だ」
「それでは、失礼いたしますね」
そう言ってリューカーンに見送られ、彼らは帰っていった。