魔獣鑑定士令嬢は飛竜騎士と空を舞う
18.第二王子の思惑
さて、別荘で治癒術師を呼んでナターリエの顔や手や腕の治療をしてもらい、ようやく一息ついた。ほぼ、食事をして、湯浴みをして、本当に長い一日を終えるところだった。いつもならば、とっくに眠りについている頃。体はくたくたに疲れているけれど、今は逆に目が覚めてしまっている。
ベッドでぼうっと考え事をするナターリエ。
(今日は疲れたわ。でも、本当にリューカーンの子供が無事でよかった)
生まれた子供たち全員が育つのかどうかはわからない。だが、エゴだと思われても、今助けられるならば助けたかった。よかった、と思う。
(それにしても)
あまりに、色んな事が一日に詰まっていて、国王との謁見のことを一瞬忘れそうになってしまう。そこは忘れそうになるのに、ヒースからのプロポーズは覚えている。勝手なものだ、と思う。
(第二王子は次期国王にはならない、というか、なれる器ではないわ。今は王子という立場だから、嫁げばハーバー家は安泰に見えるけれど、第一王子が王になれば……)
第二王子はどうなるのかわからない。しかし、スキル鑑定士である自分が妻になっていれば、悪いようにしないだろうと思う。
(結局、第二王子のための婚姻なんだわ……)
わかっている。国王はナターリエを気に入ってくれている。王族としての一般教養もきちんと修められないのに、それでもよくしてくれているのだから、ありがたい。だが、それは表向きであって、やはりスキル鑑定のスキルを持つことが大きいのだろうともナターリエは思う。
「うう……スキル鑑定のスキルを、封印ではなく失くせないかしら……」
と、言葉にして、ナターリエははっとなった。
(わたし……そうまでして、第二王子との婚姻を回避したいのね……あの、勉強に勉強を重ねていた日々を捨ててでも……と思っているなんて)
そして。
「うう、本当に……」
本当に、ヒースにプロポーズをされた。その後、あれがこうなってそうなって、結局バタバタとしていたので、まるで何もなかったように互いに振舞わざるを得なかったが、間違いなくプロポーズをされたのだ。
――ナターリエ嬢。俺と、結婚をしてくれ――
「あああ」
――初めて、グローレン子爵のパーティーで会った時から、ずっと気になっていた――
「そんな……」
――今では、もう、あなたがいないなんて考えられない。どうか、俺と結婚してくれないだろうか――
「うう……」
頭をかかえるナターリエ。困った。何が困ったかといえば。
「うう、わたしも……!」
好きだ。ヒースのことが。こうなってしまえば、認めなければいけないだろうと思う。いつからだろうか。わからない。ただ、言葉にすれば「わたしもあなたがいないなんて考えられない」のだ。
「わたしも、好きです……」
そう言ったら。どうなってしまうのだろうか、と思う。雷雨に驚いて抱きしめられた腕。飛竜で支えてくれた腕。体。それらは、一つも嫌ではない。それどころか、もっとそのままでいたいと思ってしまうほどで。
(ああ、どうなってしまうんだろう……明日? 明後日? また、国王陛下のところに行かなくては……)
ぐるぐると考えながら、ナターリエはゆっくりと眠りの淵に落ちて行った。
ベッドでぼうっと考え事をするナターリエ。
(今日は疲れたわ。でも、本当にリューカーンの子供が無事でよかった)
生まれた子供たち全員が育つのかどうかはわからない。だが、エゴだと思われても、今助けられるならば助けたかった。よかった、と思う。
(それにしても)
あまりに、色んな事が一日に詰まっていて、国王との謁見のことを一瞬忘れそうになってしまう。そこは忘れそうになるのに、ヒースからのプロポーズは覚えている。勝手なものだ、と思う。
(第二王子は次期国王にはならない、というか、なれる器ではないわ。今は王子という立場だから、嫁げばハーバー家は安泰に見えるけれど、第一王子が王になれば……)
第二王子はどうなるのかわからない。しかし、スキル鑑定士である自分が妻になっていれば、悪いようにしないだろうと思う。
(結局、第二王子のための婚姻なんだわ……)
わかっている。国王はナターリエを気に入ってくれている。王族としての一般教養もきちんと修められないのに、それでもよくしてくれているのだから、ありがたい。だが、それは表向きであって、やはりスキル鑑定のスキルを持つことが大きいのだろうともナターリエは思う。
「うう……スキル鑑定のスキルを、封印ではなく失くせないかしら……」
と、言葉にして、ナターリエははっとなった。
(わたし……そうまでして、第二王子との婚姻を回避したいのね……あの、勉強に勉強を重ねていた日々を捨ててでも……と思っているなんて)
そして。
「うう、本当に……」
本当に、ヒースにプロポーズをされた。その後、あれがこうなってそうなって、結局バタバタとしていたので、まるで何もなかったように互いに振舞わざるを得なかったが、間違いなくプロポーズをされたのだ。
――ナターリエ嬢。俺と、結婚をしてくれ――
「あああ」
――初めて、グローレン子爵のパーティーで会った時から、ずっと気になっていた――
「そんな……」
――今では、もう、あなたがいないなんて考えられない。どうか、俺と結婚してくれないだろうか――
「うう……」
頭をかかえるナターリエ。困った。何が困ったかといえば。
「うう、わたしも……!」
好きだ。ヒースのことが。こうなってしまえば、認めなければいけないだろうと思う。いつからだろうか。わからない。ただ、言葉にすれば「わたしもあなたがいないなんて考えられない」のだ。
「わたしも、好きです……」
そう言ったら。どうなってしまうのだろうか、と思う。雷雨に驚いて抱きしめられた腕。飛竜で支えてくれた腕。体。それらは、一つも嫌ではない。それどころか、もっとそのままでいたいと思ってしまうほどで。
(ああ、どうなってしまうんだろう……明日? 明後日? また、国王陛下のところに行かなくては……)
ぐるぐると考えながら、ナターリエはゆっくりと眠りの淵に落ちて行った。