魔獣鑑定士令嬢は飛竜騎士と空を舞う
 翌日、ユッテに起こされたナターリエは、完全なる寝坊をしてしまっていた。

「お嬢様、ベラレタ様がお嬢様が起きるのをお待ちになっておられますよ」
「ええっ!? ベラレタ様が!?」

 驚いて飛び起きるナターリエ。慌ててドレスをユッテに用意をしてもらい、バタバタと着替える。



「遅くなり、申し訳ございません、ベラレタ様……!」
「ああ、いいよいいよ、ヒースにも用事があったし、そんなに待ってない」

 応接室に行けば、ヒースとベラレタが向かい合って座っていた。

「食事をとらなくて大丈夫か。起きたばかりだろう?」
「は、はい、でも大丈夫です」
「そうか。座るといい」

 そういってヒースが自分の横を指さす。確かにヒースかベラレタかと言われれば、ヒース側に座るのは当然だ。だが、なんとなくそれが気恥ずかしく、ナターリエは小声で「失礼いたします」と言って座った。

「ナターリエ嬢に、直接礼を言いたくてね。ありがとう。あなたが言ったように、ルッカの町の郊外を襲っていたのはビスティだったのでね。まあ、実際群れの長を捕獲したのはフロレンツなんだけど」
「あ、捕獲なさったのですね」
「ああ。魔獣研究所に持っていくなら生かせるが、そうじゃなければ殺すしかないんだけどさ……」
「そうなりますね……群れの長となれば、どうしようもないですしね……」
「仕方がないことだね。それでさ、今日からルッカの町で祭りが開催されるから、よかったら遊びに来て欲しくて」
「えっ?」
「これ、御礼」

 そう言ってベラレタは何かのチケットのようなものを10枚程度出した。

「出店で使えるチケットさ。前もって買っているとお得になる仕組みでね。王城の方にいるナターリエ嬢みたいな人には、ちょっと物足りない祭りだと思うが、折角だし、見て行ってくれないか」

 ナターリエがヒースを見れば

「今日、約束通り俺の飛竜を休ませているのでな。行くなら馬になるが、どうだ?」
「行きます!」
「そうか。じゃあ、出掛ける準備をしてくれるか」
「はい。ベラレタ様、ありがとうございます!」
「ははは、いいよいいよ、こっちこそ、ありがとうだから」

 ナターリエは一礼をして、慌てて部屋から出ていく。それをにやにやと見送ってからベラレタは

「良い子じゃないか。第二王子が、気に入るのもわかるってものだ」

 なんてことを言う。その言葉に驚くヒース。
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